看護師として働きたいという人にとって魅力的に感じているのは、患者と直接接していくことによって自分の目の前で患者の笑顔を生み出すということです。それが看護師が患者に対して医療現場でできる最大のことであり、それを実現することを胸に抱いて看護師を目指す人が多いでしょう。そういった人にとって昇進するというのはそれほど魅力的なことではなく、より現場に張り付いていられる状況で働き続けたいと考えるのももっともなことです。

しかし、将来設計を考える上で長く働いていきたいと考えたら、婦長を目指すということも考慮した方が賢明とも言えます。婦長となると看護師のリーダーとしての働きを任されることになるため、実質的には一人一人の患者の面倒を見る機会は減ることになり、個々の看護師や他の部局とのやりとりが仕事の中心となっていきます。こういった立場に立つことは望ましくないと考えてしまうかもしれませんが、二つの理由からそれが賢明と言えるようになるのです。

一つは体力的な問題です。現場での仕事が体力勝負なことは否めません。婦長となることによってその負担が幾分軽減されて、晩年に至るまで看護師として働きやすくなる傾向があります。もう一つは教育という考え方です。世代交代は必ず必要になるものであり、現場で必死に働いてきた人が次の世代にその技術や経験を広めていくことは、医療の品質の維持や向上に不可欠になります。それを担う人材が必ず必要であり、それを担うことを目指すのは現場で活躍してきた看護師としての責務の一つとも言えるのです。